不肖宮嶋、祖国を後にすること十日と四日久しぶりに目にした陸は砂漠の土地であった。
この地からボカスカと石油が出たばっかにお隣の独裁者から好きなように蹂躙された。絵にかいたようなノー天気国家で、いまやここでブイブイ言わせているのがやっぱアメリカさんである。
ああ、あれに見えるデザートイエローの迷彩服の集団はいまや世界唯一の超大国の兵隊さんではないか。ああ、あれに見える同じくデザートイエローの巨体は、かつてバグダッドでわれわれに向かって戦車砲をブチこんでくれたM1戦車ではないか。そしてその中でひときわ際立つ国防色の集団は、双眼鏡をのぞくまでもない、わが陸上自衛隊ではないか。
わざわざキャンプバージニアから私を迎えに来たわけではなく、このおおすみの腹のなかや甲板にいっぱいつめこんだ70両もの、イラクでのりまわす陸自車両をひきとりにきているのであった。なかにはほっそりとした小柄な隊員もいる。あれこそは今次派遣された11人の女性自衛官たちであろう。
おおすみは地元クウェート港のパイロット(水先案内人)が大幅に遅刻したためにめずらしく予定から遅れて入港したものの、わずか2時間たらずですべての車両を無事揚陸させ、70両ものコンボイは日の丸をショーザフラッグさせながら、土煙をあげてキャンプ・バージニアに向かって走り去った。おおすみは乗員を上陸させることもなく、この日のうちに祖国日本にむかって出港していった。
不肖宮嶋の長い旅もようやく終わりを告げる・・・わけはない。わたしの最終目的地はここクウェートではない。ここから300キロ北にある占領下のイラクのサマワ市である。旅は半分どころかこれからなのである。
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