著者 | 宮本雅史 |
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発行 | (株)KADOKAWA |
定価 | 1,870円(税込み) |
著者とはもう30年のお付き合いになる。現在は産経新聞編集委員の肩書もお持ちだが、出版社時代もあられた。直接お目にかかったというか、産経新聞那覇支局長という大変な時期に「正論友の会」で那覇にお招きいただいたこともあった。本書末尾には著者の「特攻」と遺族の戦後と海の特攻「回天」の著書が紹介されているが著者は「特攻」関連の著書ばかりでない。初めて著者とお会いしたころは産経新聞社会部記者時代の取材から検察の闇を記した「ひずんだ正義」等を世に出しておられる。
本書はまさに著者のライフワークのごとく、日本全国を元特攻隊員や遺族をのもとを訪ね、丁寧な取材をつづけられたもので、沖縄に一回も行くこともなく、軍による集団自決強要を説いた、ノーベル賞作家と違い、著者はちゃんと遺族らと直接むかいあってきた。それは涙なくしては読み進められない。
特に「特攻」の発案者、大西瀧治郎夫妻の章、著者は大西中将自身が「統率の外道」と評した「特攻」を美化するものでもないことは言うまでもない。夫人は大西中将の遺言に沿い、どれほど心無い非難を浴びようが、つつましく生き、世のため人のために尽くして天寿を全うされたのを知り、ほっとするばかりである。また林義則少尉(当時)の婚約者であった小栗楓氏逸話も泣ける。返ってきた少尉の遺品のなかにあった指輪や役場の戸籍係にお勤めだった楓さんが少尉の戦死公報に触れ自ら朱線を引いて戸籍を抹消したこと、亡くなる直前まで少尉の写真を握りしめられていた等、目頭が熱くなるばかりであった。さらにイラクに派遣される自衛隊員にまで思いを馳せ、無事帰国を祈られていたというのである。今の日本は彼らが命を賭してまで守る価値があったのか、それこそ、門田氏の著書ではないが、高市早苗氏が講演で引用された映画「あの花が咲く丘で また君と出会えたら」のセリフではないが、「私たちが生きている今、それは誰かが命がけで守ろうとした未来だった」を思いおこされる。