産経新聞 7月14日号 

産経新聞 7月14日号 産経新聞 7月14日号
発行 産業経済新聞東京本社2024
定価 一部140円 月ぎめ3,900円(税込み)

今回の「話の肖像画」は大学1年生、上京したてのころ、銀座に買い物に行ったことがきっかけとなったワシの最初の写真集のモデルともなっていただいた人物との出会いである。大学生の分際で銀座で買い物?と首をかしげられた方、ちゃうのである。当時の藝術学部写真学科入学当初、写真基礎1aという実習のため、どうしても必要な機材がいくつかあった。確かに私立の写真学科はただでさえ授業料が高かったが機材や感材(フィルムや印画紙)は自腹やったのである。もちろん学校から貸し出してくれる機材もあったが、当然高いものからずうと貸し出し中。まあそんな数万はするが実習に絶対必要な機材の一つが露出計である。まあ医学生の聴診器みたいなもんで、これを首からさげてるだけで気分は篠山紀信やったのである。学校から薦められたのは電池のいらない…というか正確にはセレン光電池式のセコニックのスタジオL398というモデル、いまも現役バリバリでこのデジタルの世になっても映画のカメラマンなんかはこのL398を使っているくらい信頼性、正確性抜群な露出計やったのである。他にはドイツのゴッセンとか上を見たらきりない機材で、当時は単三電池いれるミノルタのフラッシュメーターというストロボ光まで計れる露出計は高すぎて学生には手が出せんかったが。このL398なら当時2万ちょいで買えた。それでももったいないと二の足踏んで買いそびれていたら同級生に銀一カメラというプロ用機材を取り扱うこの業界では知らぬ者おらぬ会社の2代目が同級生におり、その2代目の紹介でその名通り銀座1丁目のショップでL398をだいぶ勉強してもらって、やっと買いそろえ寮に帰る途中、同じく銀座数寄屋橋交差点で大日本愛国党の故・赤尾敏の演説会場に迷い込んでしまったのである。その第一印象はすさまじく、その12年後写真集までだすことになったとは当時のワシは知る由もない。