発行 | ワック(株) |
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定価 | 1,000円(税込み) |
三度Will誌上で紹介してくださった能登であるが、今度は震災でなく豪雨災害である。今回ほど虚しく、また絶望的な取材はなかった。ワシは国の内外で災害取材してきたが日本は復興のスピードが段違いで早い。いや早かった。阪神淡路大震災の2年後には週刊誌グラビア誌上で「祝・復興 神戸美女図鑑」なる企画をぶち上げたほど。長田の火災現場なんか1年後には、ここはどこやと迷うほど復興の槌音は高く、また早かった、のに、能登は9カ月たってもそのまんま。もちろん様々な悪条件が重なったといこともあるんやが…そこに豪雨が襲い掛かったのである。また狙いすましたように奥能登に。それはまさに「山津波」と呼ぶくらいすさまじい破壊力で、地元住民に言わせれば、海からの津波より質が悪い。津波は水が引けば、瓦礫は残るが、山津波は泥と瓦礫が残ってしまうのである。瓦礫もよく見たら山から転げ落ちてきた樹木が多く、その多くがそこまで転げ落ちる間に枝葉が削れツルツルとなり、まるで鋭利な刃物のごとく、家屋を串刺しにしていったのが見れた。それは人類の英知ごときではもはや手も足も出ない。が備える事ならできる。それを記録するためにもワシはまた能登に行く。
他には田中和義氏のカラーグラビア「錦に染まり、金風」、がすごい。さすが日本の美しい風景撮らせたら右に出る人がいないと言われるだけはある。ほんに目を見張る。撮影技術もさることながら、そのポイント、いつ、どんな時にこれらが見れるかの情報を収集するための努力も伺われる。やっぱ、残り少ない写真家人生、これからはもっと美しいものを撮らんと願うワシであった。