鉄道王国 スイスの旅 

鉄道王国 スイスの旅 鉄道王国 スイスの旅
著者 櫻井 寛
発行 (株)世界文化社
定価 2,970円(税込み)

同タイトルでオリンパス・ギャラリーで写真展を開催されていた著者から署名入りのご著書を購入させていただいた。このボリュームとクオリティでこの値段は出血大サービスである。著者は日芸写真学科の先輩、さらに同じ木村惠一ゼミナール出身であられ、著者と同じく初めての被写体が鉄道やったワシには、鉄一本でしのいでこられた著者はまさに憧れの的であった。実際残り少ないカメラマン人生振り返ってみると、ワシも著者のようにもっと美しいもんを被写体に選ぶべきやったと後悔しきりである。本書の写真も目を見張る絶景の数々プラス鉄たちにはありがたーいデータ付きである。ワシの鉄道がらみの仕事というたら、事故が一番多く、次はそれに乗る生ぐさーい政治家や独裁者ばっか、そりゃあ著者のようなスイス政府観光局の協力なんか絶対得られないネタばっか。ちなみに著者はスイスの鉄道が一番好きというだけに20回以上訪問されたとのこと、ワシなんか1回だけや。しかも、張り込み、追っかけばっかで全然印象残ってない。しかし、さらーとこの写真を見られておられる読者の方、わしら撮る側からしたら、車内と外の風景といっしょのとこ撮ろうと思うたら、何度も車で往復したり、さらに絶景ポイントまで歩いてたどり着かなければならず、地図や時刻表、天気図などを読み解かなければならないうえ、体力、気力も必要であり、その美しさと裏腹に大変な苦労を伴うのである。想像していただきたい。一瞬で通り過ぎる列車と風景を記憶にとどめ、そのポイントを探し出し、列車を降りたら、重い機材を担ぎ、そこまでたどり着かなければならあにのである。雪深いアルプスの麓を。それでも、日本のような悪質な「撮り鉄」がスイスまでは全くやってこないので、それだけは気が楽と著者も言っていた。ちなみに発行元の世界文化社はワシも周りのカメラマン仲間に勧められライブラリーにポジ原稿を置いていたことがある。ライブラリーはうまくしのげばそれだけで結構なしのぎになったが、ワシはせいぜいお小遣い銭程度しかならず、それはそれでむずかしい世界であった。
もう売れたのは南極や北朝鮮みたいな人がめったに行けんとこの写真ばっか。それでもその業界では世界文化にこの人ありと言われた女性編集者がおられ、その方のお眼鏡にかなうと、カレンダーや旅行パンフなど結構おいしいしのぎとなったが、ワシはそこまでには至らず、その方もすでに鬼籍にはいられ、先日お預けしてあった大量のポジが返却されてきた。今は当然デジタルの原稿となり、長い棚からポジを探し出すような光景を見ることもなくなり、隔絶の感がある。