正論 11月号

正論 11月号
■発行 産経新聞社
■定価 1,000円(税込み)

今月「不肖・宮嶋の現場」連載では北海道しかも内陸部矢臼別演習場に行ってきました。毎年のように陸上自衛隊富士総合火力演習では155mm榴弾砲の実弾射撃を見てきたが、ここ矢臼別では総合火力演習が実施される東富士演習場より長距離射撃が可能なため火薬量(モジュール)を増やす射撃がしかもま近で取材できるというのでやってきたのである。実は本州では今年度で戦車の実働部隊は無くなるが、北海道は90式、10式戦車ともブイブイ言わせている。逆に北海道には155mm榴弾砲ではFH70や19式装輪自走榴弾砲は配備されてなく装軌(キャタピラ)式の古い99式自走榴弾砲しか配備されていない。これは冬季はさらさらの雪深くなる北海道の大地では装輪(タイヤ履き)のFH70や19式装輪自走榴弾砲では埋まって動きとれんようになるからとちゃうかとワシは推察する。
それにしてもま近で見て聞く155mm榴弾砲の射撃時の衝撃波は凄い。それもそのはずで、50kgという成人女性の体重ほどもある砲弾を数十キロ飛ばす威力である。しかも誤差は半径数十メートル以内というのである。まあこれは155mm榴弾砲が戦車砲やミサイルみたいに敵戦車や車両にピンポイトで命中させて破壊させるのが目的やなく、広範囲に渡る敵兵力や建造物を殺傷したり破壊させるのが目的やからである。この日は99式自走榴弾砲の正面、側面90度、背面という三姿勢に砲を向けたまま実弾射撃を実施した。しかし、昨今のデジタルカメラ技術の進歩のせいで、ワシらも砲弾を止めて撮るのが当たり前のように求められるようになった。今回は敵戦車の装甲を貫くほどの音速より速い初速の戦車砲と違い榴弾砲やから戦車砲弾より難しくないとはいえ、もはや写って当たり前のように求められる。まあやり方はカメラマン各々が知恵をしぼっているが、これが難しい、昨今の技術に頼っても。