■著者 | 伊藤 祐靖 宮嶋 茂樹 |
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■発行 | 文藝春秋 |
■定価 | 1,500円(税別) |
対談本は「不肖・宮嶋 忍者・大倉の一撮入魂」以来20年振りである。しかし今回は同僚カメラマンという気軽な相手でなく、日本の特殊部隊の父ともいえる伊藤祐靖氏である。自然と身が引き締まろうというもんである。帯に「シン・愛国放談」とあるが、このシンは「シン・ゴジラ」や「シン・仮面ライダー」の人気からあやかったのは言うまでもない。ワシが伊藤氏と同じくした現場としては沖縄県、尖閣諸島魚釣島である。今をさかのぼること20年前、まだ国有化される前の尖閣諸島にワシは当時の西村眞悟代議士や同行カメラマン氏らと奇跡的に波が低くなった隙をつき上陸を果たした。それでも大の男3人が1時間ゴムボート漕ぎまわって、やっとこさ上陸できた魚釣島にやで、伊藤氏は沖合から泳いで上陸、そのまま尖閣諸島最高峰360mの奈良原岳にそのまま登頂、頂上に日の丸おっ立てたのである。あのヤギしか登れそうにない急斜面を何キロも荒波を泳ぎ切った後、濡れたまま登頂したのである。恐るべし特別警備隊員の体力である。ちなみに同時期の2004年9月、尖閣諸島周辺海域は密入国、密上陸しようとして、救命胴衣つけたままの台湾人活動家が飛び込み溺死したぐらいの荒波なのである。そしてさらにワシが伊藤氏出身のSBU(海上自衛隊特別警備隊」との接点はたった2度だけ。2007年6月、これが最初で最後です」という条件で広島県宮島沖で報道公開された際と呉基地の一般公開日に偶然、基地内で訓練中のとこを目撃した際の2度だけである。
2度目は一般公開日ということもあり、広報幹部といっしょに抽選で選ばれた一般市民といっしょに、どうぞご自由にお撮りくださいという目の前でもろ黒覆面で特殊部隊ルックの特別警備隊が制圧訓練しとったのである。カタログでしか見たことない武器持って。その2度だけ、以後はOBの隊員を見たぐらい。そのOBも護衛艦の立ち入り検査隊のCQB(近接戦闘訓練)を指導していた。世界の現場で目撃というか写真撮れた特殊部隊としてはフランス、ノルマディー海岸で開催された上陸作戦70周年記念式典会場外でワンボックスカー車内で仁王座りしていた黒覆面にカタロブでも見たことないような小銃かかえた隊員、さらにシンガポールで開催された、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩3代目総書記による米朝首脳会談会場を警備するSTARとかいうシンガポール警察特殊部隊、さらに都内訓練中のご存じ警視庁SAT(特別急襲チーム)、さらにさらにアクチュアルではドナルド・トランプ大統領警護中のSS(シークレット・サービス)狙撃隊員にモスクワ、クレムリン警備隊の狙撃隊員等、そして2003年4月イラク、バグダッド陥落当日、まっさきに駆けつけた米海兵隊のフォース・リーコン(武装偵察部隊)の狙撃兵などがあるが、そう、めったに姿を現さんから「特殊部隊」なのである。もっとも、米海兵隊のフォース・リーコンは伊藤氏も本書で指摘されてるとおり、米特殊作戦群(USSOCOM)隷下にないため、正確には特殊作戦能力保有部隊となる。今回本書出版にあたり、伊藤氏と膝突き合わせて一日6時間以上お話させていただいた。ただ話されているだけで身のこなしだけでただものではない雰囲気を醸し出されており、実際、伊藤氏がその気になったら、その場にあるペンや灰皿を武器にかえ、いや素手だけで不肖・宮嶋ごとき秒殺できたであろう。そんなに長時間話を続けていても、そこは元特殊部隊生みの親とはいえ、国家公務員法で定められた守秘義務はたとえ除隊されたとはいえ守らなければならないことは言うまでもなし、ワシも「そっからさきが聞きたかった」ことが多々あった。特にどんな訓練をどんな武器を使ってやっているのか等であったが、そこは想像力を働かすしかなかった。また対談では話せても活字に残すわけにはいかん内容もあったかもしれんが、そこもワシも墓場まで持っていく所存である。とにかく、とにかく、あえて名を出さぬが、自称・元特殊部隊とちがい本物の特殊部隊隊員、しかも現在も現役格闘技インストラクターの猛者の経験談は一読の価値ありである。ワシら民間人が実戦で得た浅薄な知識と違い、シャレにならぬ、生きるか死ぬかのような、すさまじい訓練を通じて得た知識やノウハウは、ワシらの、いやどんな過酷なアウトドアー環境やサバイバル技術にも応用できる貴重な話は1500円払っても充分お釣りが来るくらいである。しかしそれもこれも伊藤氏のような過酷な訓練を経たうえで得られた知識だからこそである。たとえばゴアテックスのような最新生地より日本古来の〇〇のほうがよほど快適やとかである。(〇〇のところは1500円プラス消費税払ってご購入された方は分ります。)特殊部隊に興味あるかたも無い方も現在の政治体制に疑問をかかえる国民の皆様も、賛同される方々にも失望されないことは保証させておただく。