キネマ旬報 6月上旬号

キネマ旬報 6月上旬号
■発行(株)キネマ旬報社
■定価918円(税込み)

表紙が「栄光のル・マン」のスティーブ・マックイーン、裏表紙がケーブルテレビの広告やが、86歳で現役のクリント・イーストウッドという豪華絢爛の老舗映画誌が組んだ特集に寄稿でき、名誉なことである。しかも本誌特集の「ドキュメンタリーはフィクションならぬ「現実」を突破できるか・・・という特集の巻頭、表紙の「栄光のル・マン」と主演のスティーブ・マックイーンについて寄稿された映画評論家の海野弘氏にさきんじて、わしごときのただの戦争映画好きの分際で、3ページも渡る拙稿を掲載していただき、恐縮至極である。それはひとえにわしが評論させてもろた「シリア・モナムール」があまりに強烈だからである。戦争映画の名作「プライベート・ライアン」に「ブラックホークダウン」多々あるが、そりゃあ見てて、手に汗どころか、怖いぐらいやったが、それでも映画である。この「シリア。・モナムール」の登場人物は俳優や女優が演じているのではない。道端にころがる死体も人間のものである。暴虐の限りを尽くすシリア政府軍兵士も人を殺したこともあるほんまもんのシリア兵なら、そのシリア兵から拷問を受けどつきまわされ、靴をなめさせられる少年も実在したのである。その少年が流す血も人間の生血なのである。それがわかっているからなおさら怖いのである。それでもいくらドキュメンタリー映画といえど、監督はいる。当然シリアでメガホンとれるわけもなく、亡命先のパリでスタッフがネット空間や、シリアから命がけで持ち出された映像を編集し、律儀に映像を送りながら、対話を続ける、恐ろしく勇気あるシリア人女性シマヴを通し完成させた。なお本誌最後には大根仁監督の「妄想シネマ」の連載が掲載され、本号ではドキュメンタリー特集とおり、「BOOWY 物語」を撮ってみたいと希望されている。大根監督は週刊SPA!でもコラムを連載されているが、わしはこの秋公開される、福山雅治主演映画「SCOOP」を監督したが、その際わしも微力ながらこの映画に協力させてもろて、お付き合いさせてもろた。映画にかぎらず、テレビドラマの製作現場などには、とんと縁がなかったが、テレビマンと映画人とはもはや別人種とも言えるほど違う。はっきりいって映画の世界のほうがテレビよりプロ集団のような印象を受けた。撮影現場では遊んでいるやつなんかひとりもいない、ド緊張した時間であった。