教師のしおり  

教師のしおり
■編集北九州市立教育センター
■発行北九州市教育委員会

北九州市の公立学校の先生方のための教科書とも呼べるかような重要な手引書にわしごときの作品を掲載していただき、恐縮至極である。しかも「あなたなら、この写真を見て何を思いますか?また教師としてできることはなんでしょう?」と問題提起までされている。子供たちでなく、彼らを導くべき先生方に対してである。今回は日本写真家協会の発行した東日本大震災の写真集を北九州市の教育委員会の方がごらんになり、教師になられる方やすでに教師となった方々への格好の教育材料になると写真集のなかのワシの作品に白羽の矢が当たったのである。クレジットまで入れていただき、わしの作品が一人でも多くの先生が防災知識を喚起していただく助けとなれば幸いです。ただ、この作品を撮ったカメラマンとして、このとき何もいえなかった、なにもできなかった、またそれがつらかった。じつはこのときお母さんもごいっしょだったが、我が家が近づくとそれ以上足が進むことはなかった。またいつもとまったく違う非日常をむしろ楽しんでる・・・そう初めてきた遊園地を歩いているかのようにも見える幼い兄弟ですら我が家の前に立って、これが我が家の跡かと本能的に悟り、これからの苦難を覚悟したのであろう。父親の手をにぎりしめ、その顔にでた今まで見たこともない絶望感に自分たちのおもちゃをさがすこともできず、撮るほうもただこの兄弟の苦難のさきの明るい将来を祈ることしかできなかった。