仕事の現場がわかる本
「戦場カメラマンという仕事」

仕事の現場がわかる本「戦場カメラマンという仕事」
■発行洋泉社
■定価1260円(税込み)

洋泉社といえば、映画雑誌で何度も協力させてもろたが、こんなHOW TO本をシリーズで出しとったとは知らんかった。わしは巻頭のインタヴューと写真数点、あとは一ノ瀬泰造先輩への鎮魂歌というタイトルの思い入れを寄稿させてもろた。表紙はJ.ナクトウェイが南アで弾のしたくぐっている有名な写真、コンバットマガジンでも書評が出て、誰が撮ったのか…と書かれていたが、あまりに不勉強。この業界でセルフポートレイトで防弾チョッキはおったり、カメラマンベスト着たり、プレスカード首から下げたりの白々しいのがあるが、この表紙はほんまもんの実戦、カメラで顔隠れているが、あれがナクトウェイというのを知らないやつエセカメラマン、撮ったのがデヴィッド、ピーターという双子のターンレイ兄弟のデヴィッドのほうとゆうのも常識、クレジットにもそうある。映画の「J.ナクトウェイの世界」にもこのしゃれにならんシーンがでてくる。撮ったターンレイもすごいが、半身上げたハクトウェイはもっとすごい。あのころから長袖白シャツ、ジーパンは変わってない。最近は去年バンコクで同じ姿で拝見した。ターンレイ兄弟はバグダッドと今年初めカイロで見かけたが、双子やからどっちがどっちか分からん。
まあ表紙は別にしてHOW TO本にしては「戦場に行く前の準備」の章ではイラストまで使ってカメラマンのファションをご紹介されているが、このご時世にカメラマンベストはないやろ…電送が必要なわしらはデジカメが必須、フィルムを撮り分けが不要になった現在、カメラマンベストは不必要に目立つからわしらはむしろ嫌がる。現にエジプト革命時のカイロでは襲われた。他には石川文洋氏、長倉洋海氏偉大な先輩方のインタビューやカイロでごいっしょした高橋邦典氏の「変容するアメリカのフォトジャーナリズム事情」の論文もアカデミックやで。さらにほんものの戦場カメラマン横田徹氏の「素人から現役最強の戦場カメラマンになる方法」は若い衆の参考になるで。またさらに戦争一本で食ってきた村田信一氏の「私が戦争写真を撮らなくなった理由」では考えさせらた。村田氏とは東日本震災後、仙台のリッチフィールドホテルのロビーでばったり、わしと同じパナソニックのカメラを買ったばかりで首から下げておられたが、震災発生時はニュージーランドで震災の取材されており、わしも震災起こる直前まで、リビヤいくつもりで横田氏や村田氏、高橋氏と連絡とって近況たずねとったのである。またまたさらに桜木武史氏の「被弾してもなお紛争地に行くわけ」もお若いのにすごい。わしなんかけがというても骨折か顔面にサンドフライに卵産みつけられた程度やが桜木氏はあご撃ち抜かれたのにまた同じカシミールに戻って取材をつづけられとる。つくづくすごい。ほかにも参考になるインタビューもあるが、中には戦場カメラマンどころかカメラマンですらないインチキ野郎や自称ジャーナリスト、なんちゃってカメラマンまで戦場を目指す若い衆には屁のつっぱりにもならんどころか害になる奴らまで紹介されとるので、だまされたらあかんで。というわしの寄稿した「一ノ瀬先輩への鎮魂歌」も誤植だらけ。「インドシナ」が「インドネシア」になっとる。もちろん先輩はインドネシアを訪れたことはないはず。もうひとつおおきな誤植、先輩がシェムリアップでの下宿時代に旨いめしを提供されていた「マダム」、そのマダムのご主人は「ポルポト派に殺された…」なのに「ポルポトは二殺された…」になっとるのである!わしゲラ見たはずやから、わしが見落としんやろうけど、洋泉社の校閲さんも見落としたやろ。ああ恥ずかしい…穴があったら入りたい。